2024-01-01から1年間の記事一覧

2024年5月3日投稿 序論 交換様式論 1.マルクスのヘーゲル批判 なぜ生産様式でなく、交換様式なのかが書いてある。資本制経済はそれ自体、貨幣と信用にもとづく体系だから観念的上部構造である。マルクスはこれを説明するために、「資本論」において、生産…

2024年4月30日投稿 ♂親ハエの過食は子孫のchromatin stateの変化と肥満を引き起こす。 Öst, A., et al., Paternal diet defines offspring chromatin state and intergenerational obesity Cell 159:1352 (2014). 上記論文(文献8)を略記する。 ショウジ…

2024年4月19日投稿 柄谷行人「世界史の構造」の読書ノート 2010年8月、神戸で国際免疫学会が開催され、僕は所属していた会社MBLの関係で参加した。閉会前日の夜、お別れパーティーがあったが、僕は出席せずに街を歩き、元町で書店に入った。たまたま平積みさ…

2024年4月18日 Skinnerのグループの研究の紹介(文献6) Vinclozolinはジカルボキシミド殺菌剤系の農薬であるが、anti-androgenic内分泌かく乱物質としてよく知られている。Vinclozolinに被曝した親の120日齢より若い♂仔ラットは、精巣の精原細胞に欠損を生…

2024年4月12日投稿 前回紹介した論文のNews & Viewsの記事(文献5)を、Michel Skinner (Washington State University)が書いている。Skinnerは関連分野の代表的研究者である。まず、Ngたちの結果を次のようにまとめた。HFDは体細胞に変異をもたらし、病気…

240405投稿 ♂親ラットの過食が♀仔ラットの膵島に異常を誘発する Ng, S-F. et al., Chronic high-fat diet in father programs β-cell dysfunction in female rat offspring(文献3) まず、上の論文を見てみる。2型糖尿病は遺伝的要因と生活習慣の要因によ…

2024年3月30日投稿 Transgenerational epigenetic inheritance 1 ここからまた、進化に関する項目を書く。 これまでは、genetic assimilationについて書いてきた。すなわち、外的刺激に応答して出現するepigeneticな新しい形質を示す生物個体が、選択継代交…

2024年3月24日投稿 せいだのたまじ 今日は料理の話を一つ。昨日夜中の2時ごろ、思い立って八百屋で買った小さい新ジャガイモ(108円だった)を使って、上野原の郷土料理「せいだのたまじ」を作った。この料理は昔、雑誌のDanchuに載っていたのを見てから、と…

2024年3月20日投稿 本稿のおわりに 本書の著者は、「本書の目的は、戦後史全体の大きな流れをふまえた上で、日本政治の現在を理解することであった。ここまで75年間(1945年~2020年)の歴史をたどり、われわれはようやく「いま」について語りうる段階に至っ…

2024年3月18日投稿 前回からの続き 「改革の時代」は終わり、「政治の再イデオロギー化」が、2000年代中葉から20年の政治のテーマだ、とするのが本書の著者の見解である。もちろん、その中心人物は、安倍晋三である。日本政治は憲法問題や防衛政策といった保…

2024年3月8日投稿 小泉改革について 2000年4月、いわゆる「5人組による密室談合」によって、森喜朗内閣が誕生した。6月総選挙があったが、自民党は公明党の協力があって、森首相の不人気がありながら、233議席を獲得した。しかし、都市部で自民党の苦戦は明…

2024年3月2日投稿 前回からの続き 中曽根が次の首班として指名したのは、田中派を割って経世会を旗揚げした竹下登だった。竹下は典型的な調整型政治家で、与党内だけでなく、野党議員や官僚にも顔が利いた。中曽根および大蔵省が税制改革の実現を託したの…

2024年2月25日投稿 前回からの続き 金権政治に代わったのは、クリーンの・イメージの三木武夫であった。三角大福から角が抜けて、「大福」間の激しい対立から、副総裁・椎名悦三郎の裁定で、三木になったいきさつがある。三木は企業献金全廃を目指していたが…

2024年2月18日投稿 岸田総理も自ら認めているように、今の世の中には「政治不信」が充満している。もしかすると、これはわが国政治が大転換点に差し掛かっている兆しかもしれない。この機に、日本の戦後政治をおさらいしてみる必要を感じた。以下の書は、思…

240211投稿 原核生物のプリオン プリオンは様々な真核生物、すなわち動物、ショウジョウバエ、Aplysia、そしてArabidopsisにもその存在が報告されている。では、原核生物はどうか。 プリオン検索のためのapplicationがKingとLindquistの研究グループによって…

240208投稿 酵母発現形質がプリオン依存性から非依存性に変わる これまでに、Lindquistたちの研究によって、次のことが明らかになった。すなわち、プリオンによって新しい多様な表現形質が作られる。これはepigeneticな変化であるが、genetic backgroundを変…

240202投稿 雑録4.映画評 是枝裕和監督「海街diary」 是枝監督の映画で、僕の一番好きな作品である 吉田秋生の少女コミック「海街diary」を原作とする、鎌倉に住む幸田三姉妹とその異母妹の物語である。この映画は、葬式で始まり、葬式で終わる。原作のは…

240130 プリオン[PSI+]による表現形質のheritableな変化 True & Lindquistは文献35において、プリオン[PSI+]が、酵母細胞のgenotypeとphenotypeの関係を支配するepigenetic mechanismの範疇に入り、いわゆるphenotypic plasticityの概念を広げることを、実験…

240126投稿 今回は、新型コロナmRNAワクチンについて、最近出た論文を紹介する。 COVID-19 mRNAワクチンは実際にわれわれが何回も接種を受け、恩恵に浴してきた。2023年のノーベル生理医学賞が、Kariko博士とWeissman博士に授与された。このグループが開発し…

240111投稿 一昨日の記事について追記 ブログの読者は次の点に留意しておいてください。 Lindquistたちは、酵母の系を利用して、Hsp90によって隠されていたallele(対立遺伝子)が、ストレスによって新しい形質として発現し、選択継代を繰り返すと、ストレス…

240108投稿 Hsp90の酵母の表現形質に対する寄与 1. Lindquistによれば、Hsp90は少なくとも2つのルートで新しい表現形質の急速な進化に寄与している。 A) Potentiatorとしての作用:folding補助作用を発揮して遺伝的変異を新しい表現形質に作り上げる。例え…

240103投稿 雑録3.夜寝床で読む本 昔は、外国の探偵小説の翻訳版を読んだりしていたが、いまは酒を飲んで寝床に入るので、数ページも読めば寝てしまえる本がいい。中でも、よく読んだのが、小林勇の「山中独膳」である。小林勇は岩波書店創業者岩波茂雄の…