2024年4月12日投稿

前回紹介した論文のNews & Viewsの記事(文献5)を、Michel Skinner (Washington State University)が書いている。Skinnerは関連分野の代表的研究者である。まず、Ngたちの結果を次のようにまとめた。HFDは体細胞に変異をもたらし、病気を誘導するかもしれないが、体細胞の変化が子孫に伝達されることはない。したがって、HFDはラットの精巣における精子形成に異常をもたらし、その異常がgerm lineの変異gene programmingを引き起こした。化学薬品などで精子のDNAの変化が直接あるいは間接的に誘導され、それが子孫に伝わる場合があるが、その変化の方向はランダムで頻度も低い。Ngたちの結果は、子孫に伝わる異常が高頻度で、特定の方向に再現性よく起きている。実験結果について一定の評価は与えてているが、精子あるいは精子前駆体(精原細胞あるいは精母細胞)が受けるepigeneticな変化で、もっとも一般的なのはDNA methylationなので、それらの解析が残されている、としている。Skinnerたちのグループは、実際に薬剤被ばくしたラットのsperm promoter epigenomeの変化を詳細に解析しているので、次は、それらを少し見てみる。

  1. Skinner, M. K., Nature, 467: 922 (2010)