240211投稿
プリオンは様々な真核生物、すなわち動物、ショウジョウバエ、Aplysia、そしてArabidopsisにもその存在が報告されている。では、原核生物はどうか。
プリオン検索のためのapplicationがKingとLindquistの研究グループによって開発されている(文献44)。PLAAC (prion-like amino acid composition)といい、検索しようとするアミノ酸配列を入力すると、自動的にスコア付けを行う。Yuan & Hochschild(文献45)はこのツールを利用して、60,000の細菌のゲノムを検索し、candidate prion-forming domains (cPrDs)を同定し、もっとも有望なcPrDとしてClostridium botulinum E3 strain Alaska E43のthe transctiption termination factor Rho (Cb-Rho)にある68アミノ酸配列を選んだ。Rhoはhexameric helicaseで、RNA polymeraseによる転写の終結因子である。cPrDをを¥含むCb-Rho領域をE. coliに発現させると、amyloid系の会合物を作る。また、cPrDは酵母Sup35のPrDと入れ替えたキメラタンパク質は、酵母細胞中でSup35と同等の機能を発揮することが示された。
Cb-Rhoが大腸菌中で、プリオン構造と非プリオン構造の間の遷移を示すかどうか調べた。レポーターlacZの前にrho-dependent terminator tR1を置いて、rhoが発現するとlacZの発現が減るシステムで、rhoの発現量を見る。Cb-Rhoはプリオン状のときはterminator活性が減るので、lacZの発現が増す、という仕組みである。
大腸菌のrhoをCb rhoで代替できないので、Cb-rho NTD(N端半分)とE. coli-rho CTD(C端半分)のキメラで代用したが、置換株は生育が遅かった。そこで、さらにキメラrhoをプラスミッドにのせて入れた。このややこしい株をプレートすると、lacを高発現するコロニーと低発現するコロニーが出現した。この結果は、Cb-rhoを有する株がプリオン状態をとるコロニーと非プリオン状態をとるコロニーの両方を含むことを示している。Lacを高発現するコロニーの細胞の抽出液にはRhoタンパク質の凝集体が認められた。Cb-rhoがプリオン状態のコロニーをresuspendしてプレートすると、大部分のコロニーはCb-rhoがプリオン状態を維持していた(120世代以上安定に維持される)。しかし、酵母Hsp104のorthologであるdisaggregase ClpBを追加発現させると、lacの発現が顕著に減少した(Cb-rho活性が回復した)。
酵母のSup35がプリオン状態のとき、多くの表現形質に変化が認められた。同じように、Cb-rhoがプリオン状態のとき、転写終結活性の減少によって、大腸菌のtranscriptomeに変化が誘導されることが予想される。しかし、この重要極まりない解析は、まだ著者たちは行っていない。
44. Lancaster, A K et el. Bioinformatics 30: 2501 (2014).
45. Yuan, A H & Hochschild, A. Science 355: 198 (2017)