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Hsp83タンパク質とTrxGタンパク質の直接的相互作用

ショウジョウバエの発生において、Polycomb Group (PcG)およびTrithorax Group (TrxG)タンパク質は、homeotic (Hox)遺伝子による体節形成を調節している。Rutherford & Lindquistは、ショウジョウバエのHsp83変異株のストックの中に、PcG変異やTrxG変異と似た形質異常体があることを見出した(文献10)。また、Krlf-1変異の眼の異常表現型を増幅する因子として、Hsp83遺伝子変異とTrxG遺伝子変異が単離された(文献20)。これらの事実は、PcGやTrxGの作用にHsp83がかかわっていることを示している。そこで、Paroたちは、Hsp83とTrxGの相互作用を調べた。

 ショウジョウバエの培養Kc細胞をHsp90阻害剤radicicol(Rad)で処理すると、Trx(TrxGの一つ)の分解が認められ、homeotic genesの発現が減少していた。しかし、Radによって、Trx遺伝子の転写は影響を受けていなかった。Chip解析によると、Trxタンパク質のbithorax複合体(あるいはAnthenapedia複合体)遺伝子PREs(Polycomb response elements)への結合がRadによって阻害されることが示された。Polycombタンパク質のPREsへの結合は影響を受けていなかった。Trxが分解されるからPREsに結合しないのは当然だとするのではなく、TrxがPREsに結合するためには、複合体形成が必要だが、複合体形成できないTrxは分解されてしまう、と考えるべきである。熱ショック処理したハエの幼虫のpolytene chromosomeでは、TrxはHsp83とheat shock puffs(heat shockによって活性化された遺伝子群が局在する)にco-localizeしていた。Paroたちは、ハエの幼虫の核の抽出液から、TrxとHsp83が共免疫沈澱することも、認めている。

  1. Tariq, M. et al. PNAS 106: 1157 (2009)