231005投稿

継代実験:増幅された携帯異常が第二の遺伝子変異に非依存的になる

KrIf-1とHsp83変異あるいはTrxG変異遺伝子(例えば、Hsp83e3Aあるいはvtd3)のかけ合わせによって得た仔ハエの中から、眼の異所性発現を示している♀の個体を選択し、正常な♂と交配してF1個体を作った。F1個体の中から眼の形態異常を示す♀の個体を選択し、正常な♂と交配させてF2個体を得た。以下同様にしてF10~F13個体を得た。こうして作ったF5世代以降の個体では、60%以上が形態変異を示すが、驚くべきことに、それらの個体はHsp83e3A(あるいはvtd3)変異遺伝子を有していなかった(Hsp83野生型あるいはvtd+ホモ)。この結果は、変異表現型の樹立にはTrxGやHsp83遺伝子の変異が必要だが、一度変異表現型が樹立されると、その維持には、もはやこれらの変異遺伝子は必要ないことを示している。

図5:拡大した異常表現型が第二の変異遺伝子非依存的になった。

epigenetic機構による遺伝子発現の抑制

 Sollarsらは、TrxGの遺伝子産物を含む複合体がヒストン修飾やクロマチン再構築に関与することから、Hsp83もepigenetic過程を改変する作用をもつ可能性を考えた。TrxGの変異において、ヒストンのhypoacetylationが起こることから、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDAC)を使えば、眼の異所性発現を抑制できるのではないかと予想して、検討した。期待通り、TrichostatinはTrxG変異あるいはHsp83変異(とKrIf-1の組み合わせ)による眼の異所性発現を強く抑制した(文献20)。