2025年6月22日

第4部 第1章 世界資本主義の段階と反復

2.資本と国家における反復

資本主主義には固有の反復性があるが、国家にも反復性がある。マルクスは「ルイ・ボナパルトブリュメール18日」の冒頭で、「ヘーゲルはどこかで、すべて世界史上の大事件と大人物はいわば二度現れる、と言っている。ただ、彼は、一度目は悲劇として、二度目は茶番として、と付け加えるのを忘れた」と書いた。マルクスは、1848年革命の中からルイ・ボナパルトが皇帝に就任するに至った過程には、その60年前の第一次フランス革命(1789年)でナポレオンが皇帝になった過程が反復されていることを、強調した。

 ナポレオンはイギリスの産業資本主義に対抗して、ヨーロッパ統合を唱えた。彼はイギリスの海上帝国に対して、それを封鎖する陸の「帝国」をつくろうとした。その意味で、彼はまさに「皇帝」と名乗るべき理由があった。甥のルイ・ボナパルトも同様である。彼はイギリスに対抗して重工業化の政策を国家的に推進すると同時に、社会主義(サン・シモン主義者)として、階級的対立を解消すると称して、さまざまな社会政策を講じた。国家の専制的支配者であると同時に、民衆の代表者であること、それが「カエサル」(皇帝)である。

 しかしながら、ナポレオンは「帝国」を実現することはなかった。ナポレオンのヨーロッパ征服は、一方で「フランス革命の輸出」を、他方でイギリス資本主義に対抗するための「ヨーロッパ連邦」の企てと意図した。しかし、それがもたらしたのは、ドイツその他におけるナショナリズムの喚起であった。国民国家帝国主義的膨張が新たに国民国家を作り出す、最初の例である。

 ヨーロッパだけでなく、世界各地で、国民国家が旧世界帝国を否定する形で」生まれた。それは、「王政」としてあらわれるとは決まっていない。むしろ、発展途上国独裁国家社会主義独裁国家のようなかたちをとった。国民国家は世界=経済の中で形成されるユニットである。それは歴史的な構築物であり、不安定なものである(しかし、容易に解体されるものではない)。国民国家は最終的な単位ではない。近代の国民国家は、旧世界帝国を否定するものとして生じたが、そこには旧世界帝国、あるいはその時代にあった文化的・宗教的な共同性に回帰しようとする衝動が存在する。ドイツの「第三帝国」や日本の「大東亜共栄圏」はその例である。