2024年10月9日

前回紹介した論文に引き続き、Cellに掲載された論文で、デンマークの2つの研究グループと都医学研の正井久雄さんの研究グループが共同で行った研究結果である。読んでみると、前の論文より分かりやすいので、こちらを先に紹介すべきであった。重複するところもあるが、そのまま紹介する。

文献19:Charlton, S. J. et al. Cell 187: 5029-5047 (2024)

The fork protection complex promotes partial histone recycling and epigenetic memory

Replisomeの構造的解析によれば、Mrc1 (ヒトではCLASPIN), Tof1(ヒトではTimeless; fission yeastではSwi1), Csm3(ヒトではTipin、fission yeastではSwi3)よりなるfork protection complex (FPC) がreplication forksを安定化させている(図1)。Fission yeast FPC mutantsはheterochromatin欠損変異(centromeres, telomeres, mating-type regionなどの異常)として得られた。Replisome はnucleosome assembly factors, histone modification enzymesやrecycling of modified parental histonesのrecruitを仲介しており、parental and newly synthesized histonesの子細胞のDNA鎖への配分も支配している。著者たちは、fission yeastのgeneticsとゲノム解析によって、epigenetic inheritanceにおけるFPCの役割を解明しようとした。

図1.文献19より引用。

Heterochromatin (HC)の維持にはFPCが必要である。

Fission yeastのmating type regionのHCを実験系として使った。cenH elementのHCをRNAiによって樹立し、Atf1-binding sitesからdomain boundaries IR-Lまで全領域に拡張させた。一度HCは構築されると、数百回の細胞分裂にわたって、RNAiとcenHの関与なしに維持された(図2)。HC樹立はcenHに隣接する部位に挿入したYFP発現変化で調べ、HCの拡張は縁側に挿入したmCherryの発現変化でモニターした。

図2.文献19より引用。

 Clr4Δ細胞(H3K9me HCを欠損する)にclr4 geneを導入することで、de novo HC formationのrateを測定した。HC形成にそれぞれswi1Δ, swi3Δ, mrc1Δがどう影響するかを見た(図3)。その結果、FPCの欠損はHC構築形成には必要がないことが示された。同時に、FPCに欠損がある場合、継代25代程度続けると、HCは完璧には維持されなかった。Clonalな培養によって、mCherryの発現抑制(HCの維持)が、二つの娘細胞の一つで、壊れる場合が観察された(HCのasymmetric伝達)。

図3.文献19より引用。

Mrc1のHC維持の機能はcheckpointにおける役割とは異なる

図4のMrc1のdomain構成を参照のこと。Mrc1Δ、ΔHBS (Hsk-bypass segment)、ΔNTHBSはどれもsilencingに欠損を示した(図5B,C)。HBS mutantsはcheckpoint機能があったが、NTHBS mutantsは欠損していた(図5D).したがって、Mrc1のHBS domainがHC維持機能の鍵となっている。さらに、Mrc1とHsk1はどちらもHC gene silencingで互いに独立に機能している、データが示されている。

図4.文献19より引用。

図5.文献19より引用。


HC
維持におけるMrc1とMcm2の共同作業

図6Aに示したように、pombecerevisiaeは共に、Mrc1 HBSにDDDSDDED (795-801)およびKAF (833-835)配列を有している。これらの配列をAに改変したところ、silencingに欠損を生じたが、checkpoint機能には影響しなかった。Cross-linking mass spectrometry or cryo-EMの結果から推定したreplisome factorsとcerevisiae Mrc1のcontact pointsは、pombe Mrc1にもあるNTHBSあるいはHBS domainsで、Mcm2とcontactしていた(図6A)。仮に、Mcm2 amino-terminal HBDがparental histone recyclingに関わっているとすれば、Mrc1との共同作業が考えられる。PombeのMcm2 HBDのY80 and Y89(他の主でBHに必要とわかっている)をAに痴漢したmutantを作った。Mcm2-2A mutantでは、mCherry reporterの抑制がなくなった(図6B)。このsilencingの消失はmrc1 mutantsと同じ性質を示した。これらの結果から、Mrc1とMcm2は共同でHC維持に作用していることが示唆された。

図6A. 文献19より引用。

図6B. 文献19より引用。

 Mrc1ΔHBSとmcm2-2Aはsub-telomeric regionsのH3K9me2を消失させたが、RNAi activityの部位のH3K9me2はそのままだった(図6C)。このことは、HC構築を支える強いシグナルがMrc1の作用の他にあることを想像させる。そこで、HCのcenH RNAi nucleation siteのdeletionを作っても、HCは壊れなかった。しかし、mrc1ΔHBSを欠損させると、H3K9me2の部分的欠損が現れた。したがって、Mrc1とmcm2 double mutantでH3K9me2が残ったのは、ΔK部位にsilencing elemtntsが残っていたのかもしれない。

図6C.文献19より引用。

 Mrc1のHBSがhistone recyclingで機能しているとすると、Mrc1ΔHBSにGFPfuseさせ、そこにPob3-GBPを加えて、HBS欠損を補えるかどうかを見た(図7左)。結果は、silencing欠損がある程度補償された(図7右).これらの結果は、Mrc1 HBSがreplication forkにおけるhistone chaperone activityを提供していることを示唆する。

図7.文献19より引用。

Parental histonesのlagging strandへのrecycling

DNAが複製したとき、parental histonesとnew histonesがleading and lagging strandsにどう分配されるかを調べた。H3K36me3をparental histonesの印とし、H4K20me0をnew histonesの印とした。Fission yeastでは、cell cycle M-phaseのすぐ後にS-phaseが始まるので、cold-sensitive tubulin mutantを使い、S-phase開始に同調させておき、さらにそのとき、合成されたDNAはEdUでラベルした。histone markersでparental histoneとnew histoneがそれぞれ結合しているDNA断片を取り分けた。さらに、DNA2本鎖を分けて、EdUを含むDNA鎖を分別し、sequencingを行った(図8)。S-phaseのDNA合成開始点はsequencingの結果から同定できる。

図8.文献19より引用。

 図9に示したように、WTでは、parental histoneのleading strandとlagging strandへの結合はsymmetricalであるが、mrc1ΔBSやmcm2-2Aの変異株では、leading strandに偏っていた。当然、new histoneは逆になった。結論として、Mrc1はMcm2と同様に、parental histonesをlagging strandに振り分ける働きをして、WTにおけるhistones分配のバランスをとっている。

図9.文献19より引用。

構造的観点からみたMrc1のhistone recyclingでの役割

Mrc1は、場合によってはMcm2と共に、histonesに結合し、他の多くの因子と共同でhistoneのco-chaperoning機能を発揮しているであろう。既に、FACTとAsf1は、replisome componentsのMCM2やPolαと共に、histone co-chaperoningを行っていることが報告されている。これらのことから、soluble chaperonesがhistonesを、replisome中をhistone-binding interfacesをたどって、しかるべき部位に運ぶと考えられる。AlphaFold構造予測によれば、Mrc1は単独、あるいはMcm2と共に、nucleosome中と同じ構造をとっているH3-H4 tetramerに結合する。Mrc1の710-790(HBSの先の部分を含む:図10参照)の部分がH3-H4 dimerを包み込み、長いα-helixをbridgeとしてもう一つのH3-H4とつながっている(図10A)。この結合様式は、結晶構造解析によって示された、mammalian Mcm2がH3-H4を包み込む様式と同じである。

 Mrc1 HBSはMrc1 HBDとMcm2の連結を担っている(KAF motifがMcm2のF204、L208などが形成するhydrophobic grooveに接している(図10A)。DSE motifは両者のflexible connective linkerとして機能している(図10i)。これらのHBSが両者の連結にかかわる構造は、XL-MSやcryo-EMのデータと一致している。H3-H4側からみると、HBSのR784からの配列にH4のC-terminusやdimer中のH3のL1-linkerなどに接している(図10ii)。

図10.文献19より引用。

Pull-down assayで検証したMrc1とH3-H4の結合

Full-length Mrc1と、HBDは有するがMrc1 binding siteを欠損したMcm2によるpull-down assayを行った(図11)。H3-H4が存在するときにのみ、Mrc1はMcm2 mutant共沈した。すなわち、Mrc1とMcm2 mutantは独立に、しかも同時にH3-H4に結合する。また、Mrc1はH3-H4 dimerよりも、ずっと強くcross-linked H3-H4 tetramerに結合した。図10Bにある、RKRN residueおよびMFL residueは、それぞれlong Mrc1 helixをtwo H3-H4 dimersに結合が予測されたが、それぞれの残基をAlanineに置換したmutantsでは、実際にin vitro H3-H4 dime bindingが弱かった。それらのmutantsは細胞レベルでみた、silencing効果も弱かった(図12)。RKRN mutantでは、parental histonesのleading strandへの振り分けが強くみられた(図13)。しかし、MFL mutantでは、逆に、lagging strandへのparental histonesのほうが優先された(図13)。すなわち、Mrc1はparental histonesのleading and lagging strandの両方で機能している(ただし、後者ではMcm2と共同で)。これらのMrc1の分子機能は、conserved MRC1-like domainのHBD、HBS connectorおよびMcm2-binding regionsにある。

図11.文献19より引用。

図12.文献19より引用。

図13. 文献19より引用。



 

最後に、Mrc1のmammalian homologであるCLASPINも、mouse ESCsにおいて、parental H3-H4のleading strandへのrecyclingについての短い記述がある。

図14. 文献19より引用。

 まとめとして、H3K9me2 histonesがreplisome上でleading and lagging strandsに振り分けられるモデルが示されてある(図14)。Lagging strandへ振り分けられるhistoneはMrc1とMcm2の両者に結合している。