2024年9月29日投稿
ヒストン情報の親細胞から子細胞への伝達
最新のCellに次の論文が掲載されていたので、僕の勉強もかねて、紹介する。本論文では、例えば、1つの幹細胞が同じ性質をもつ2つの子細胞に分裂するとき、親DNAのchromatin構築が子細胞のDNAに移る仕組みを明らかにしようとしている。
文献18: Yu, et al. Cell 187: 5010-5028 (2024), A replisome-associated histone H3-H4 chaperone required for epigenetic inheritance
Schizosaccharomyces pombe(分裂酵母)の実験系で、H3K9me3(heterochromatin形成の主役)の親DNA鎖から子DNA鎖への伝達(以後単に伝達とする)において、Cir4/Suv39h methyltransferaseが必須であることが示されている。DNA複製時に、親DNA鎖のH3K9me3の位置を読み取り、子のDNAの同じ位置にコピーを作り、親と同じgene silencingを引き起こす。
Nucleosomeは147bp DNA,とoctameric histone complex (two H2A-H2B dimers and H3-H4 tetramer)からなる。DNA複製の時、親鎖のH3-H4 tetramerはそのまま子鎖(の一方)に移る。H2A-H2BはDNA複製時にrecycleされたりするdynamicな挙動を示す。Cdc45-Mcm2-7-GINS (CMG) replicative helicaseのMcm2 subunit, Pol1 catalytic subunit of the DNA polymeraseα, Dpb3-Dpb4 subunit of DNA polymeraseε, single-strand binding protein complex RPA, replication licensing factor Mcm10などのreplisome componentsがH3-H4に結合している。新たに合成されたDNA鎖に親DNAに結合していたhistonesが正しく対称的に(leading strandとlagging strandの上に)配分結合されるには、これらのreplisome-binding componentsの作用が必要である。これらのcomponentsの変異によって、偏ったhistone配分となることが知られている。これ以外にも、the facilitates chromatin transaction (FACT) complexがreplicationにcoupleしたnucleosome assemblyにかかわっている。
実験系の説明
1.目的:heterochromatin (HC)のectopic domainを誘導形成する。
2.10XtetO-ade6+ reporter geneをeuchromatic locusに挿入した。
3.Bacterial tetracycline repressor (TeTR)をH3K9 methyltransferase Clr4にfuseさせた。TetR-Clr4ΔCDあるいはTetR-Clr4-initiator (TetR-Clr4-I)を使った。
4.TerR-Clr4-IがTetOに結合すると、45kb H3K9me2/3が形成され、ade6 reporter geneがsilencingされる(図1)。
5.細胞をanhydrotetracycline (AHT)存在下に培養すると、TerR-Clr4-Iが遊離し、HCはそのまま次世代にepigenetic inheritanceする。
6.HC構造の形成と維持を区別してみることができ、HC構造の維持に必要な因子をscreeningすることができる(AHT存在下にAde6の発現が抑制されるか、どうかによって)。

クェgtHeterochromatin維持に必要なreplisome components and histone chaperonesの探索
これまでの研究によって、Mac1などのreplisome componentsの変異がgene silencingの欠損をもたらすことが知られていた。上述した実験系を使って、HC構造のestablishmentおよびmaintenanceを区別して調べた結果、Mcm2 (DNA replication licensing factor), Pol1 (DNA polymeraseαcatalytic subunit), Dbp3-Dbp4 (RNA helicase)は構造維持に必要なことが分かった。一方、Rfa3(subunit 3 of replication factor A )やCtf18 (chromosome segregation factor)は、構造維持に必要でない ことが示された。同じようにして、FACT complexを構成する因子のうち、Pob3とFft3 ATPaseはmaintenanceに必要で、Nhp6は必要でないことが示された。
Mrc1のreplication checkpointとepigenetic inheritanceにおける役割を区別する
Mrc1がcheckpoint signalingのmediatorであることは知られている。Replication proteinsであるSwi1とSwi3はHCの維持に必要でもある。つまり、the replication fork protection complex (FPC)はまるごとHCの維持に必要である(図2)。

細胞がreplication stressを受けたとき、Mrc1はstress signalをシグナル下流のcheckpoint effector kinase Cds1に移す(そのserine-glutamine/threonine-glutamine(SQ/TQ)motifsのhyperphosphorylationを通じて)。Cds1のT645, T653とS604がhyperphosphorylation sitesとして同定されている。Mrc1のT or SをAに置換すると、mrc1Δと同様にhydroxyureaに感受性となったが、HCの維持は行われた。したがって、replication checkpointの欠損は、HCの維持できないことの原因ではない。
Immunoprecipitation coupled with mass spectrometry (IP-MS)の結果によると、Mrc1はreplisome componentsに結合しているが、replisome componentsはC-terminal phosphodegronを欠損するMrc1 mutant proteinには結合しない。また、Mrc1はreplisome-independentlyにFACTに結合する。その他の結果を総合すると、Mrc1は親鎖のhistonesの移行にかかわっている可能性が浮かび上がる。
Histone H3-H4 tetramerのMrc1/CLASPINへの結合
著者たちは、template-free mode of AlphaFold-Multimerを利用して、Mrc1にhistone-binding regionがあるかどうか検討した。Template-freeとは、既存の構造データベースにある類似の構造を参照しないで複合体の構造予測をする手法のこと。AlphaFoldは構造予測に深層学習モデルをとりいれている構造予測の手法。図3に示したように、Mrc1の701-839に6個のαhelicesがある。予測された構造は図4のように、3つのα1-α3のhelicesはhistone H3.1-H4 tetramerの支柱のように囲み、α4-α6のhelicesは別の位置に想定されたが、5つの予測モデルが同列に出されたように信頼度がやや低い。Mrc1のα1とα3はそれぞれH3-H4 dimersに結合しており、α2はH4 subunitsに結合している。このMrc1の結合によって、H3-H4 tetramerがDNA複製時にも、安定してDNAに結合している。


AlphaFoldで予測したMrc1 histone-binding domainの実験的検証
Glutathione S-transferase (GST)-tagged Mrc1 fragmentsとhistone H3-H4の結合をin vitro pull-down assayで調べた。図5に示したように、Mrc1のaa 651-900 fragmentにH3-H4は結合していた。Mrc1 fragmentsはH2A-H2Bにはほとんど結合しなかった。S. cerevisiae Mrc1およびhuman CLASPIN (checkpoint factor)も、それぞれH3-H4に結合した。

GST-tagを外したMrc1 (651-900)と(H3-H4)2は、安定した複合体としてsize exclusion chromatographyで単離できた。このH3-H4 tetramerに結合するMrc1-like domainを以後Mrc1-HBDと称する。AlphaFoldによって予想された構造では、Mrc1-HBDα2 helixの中央にある酸性アミノ酸残基E763とE767が2つのH4にcontactしている(図6)。Mrc1-HBDαhelixの両側にあるhydrophobic amino acids(図6の黄色の部分)は、2つのH4のhydrophobic領域と相互作用している。実際に、Mrc1-HBDのhydrophobic pocketsを構成すると予想されたM755, F758, L774に変異を入れると、GST pull down assayによる結合が見られなくなった。同様に、mrc1-E763R, D767K変異を導入すると、H3-H4への結合が失われた。HBDを除いたMrc1を発現している細胞では、HCの維持が認められなかった(replication check-point signalingは正常だった)。このことは、S. cerevisiaeでも確認できた。

DNA複製中にheterochromatin構造を維持するのにMrc1が必要である
実験はS. pombeとS. cerevisiaeの両方を使った。Cerevisiaeの細胞をzymolase digestionし、MNase(Ca+-dependent endonucleaseで、proteinsと結合していないDNAを選択的に切断する)で処理し、以後定法で分画した(protein-associated nascent DNA, eSPANと略す)。Cerevisiaeのwild typeでは、replication origin regionsで、parental histone (H3K4me3をmarkerとして)とnew histone(H3K56acをmarkerとして)が複製した両DNA鎖に均等に配分された。しかし、mrc1Δでは、lagging strandへのparental histoneの移行が弱かった。
Mrc1は多くのreplisome componentsに結合し、Mrc1-like domain(図2参照)は直接histoneと相互作用しない部位を有する。そこで、eSPAN実験によって、mrc1 mutantsを使って、replisomeと相互作用に影響を与えず、histone bindingに欠損を示すものを探した。すると、cerevisiaeではmrc1-Δα2、pombeでmrc 3-Aがその性質を示した。他の結果を併せて考慮すると、Mrc1-HBDのmutationsはhistoneの親鎖から子鎖へのsymmetrical transferには影響を与えなかった。
Replisome上のFACT binding sites
FACT (facilitates chromatin transcription)はchromatin DNAをtemplateにしてin vitro transcriptionを行うのに必要な因子である。Mrc1はreplisome-independentにFACTに結合する。また、Mcm2はFACTと共同してhistoneに結合する。著者たちは、Mrc1と他のhistone-binding proteinsはFACTが結合しているhistonesのco-chaperoneとして働くのではないかとの仮説を立てた。Pairwise AlphaFold-Multimerによって、FACT subunitsとreplisome componentsの相互作用を予想した。IP-MSの結果と同様に、その予想通り、Mrc1にtwo FACT binding domains (FBDs)を示した。さらに、FACT構成成分Spt16とFPC subunitのSwi1のinteraction interfacesが示された。また、Swi1-Mcm2とSwi1-Mrc1 interactionsも示唆された。
以上のことから、Mrc1/CLASPINはFACTや他のreplisome componentsとchaperone networkを構成し、親鎖のhistone H3-H4 tetramersを新たに合成された子鎖に移動させる仕組みの一部が明らかになった(図7にモデルを示した)。ただし、replisomeの前方から、新たに合成された子鎖までは、かなり距離があるので、解明されるべき仕組みが残っている。
