2024年6月30日投稿
Vernalization 4
再度、Caroline Deanのグループの最近の研究を見てみよう(文献5)。Cold-induced FLC epigenetic silencingにおけるPRC2複合体の作用を、新しい角度で解析した研究である。PRC2は動物や植物の発生・分化において、様々な遺伝子のtranscriptional silencingで中心的な役割を担っている。SilencingはPolycomb target genesのcic-regulatory regionsにH3K27me3を付加することで起こる。このH3K27me3を含むsilencingの構造体は、細胞が分裂増殖しても維持される。細胞増殖が速い時、PCR2 accessory proteinsはsilencingのためのepigenetic構造体(そのmethyltransferase活性)の維持に必要である。
PRC2 subunitsは動植物でよくconserveされているが、accessory proteinsは多様化している。ArabidopsisのPRC2 accessory proteinsとしてVIN3やVRN5 (VEL proteins)がvernalizationに必要だと遺伝学的に同定されており、さらにcold-treated個体ではVEL1とともにPCR2に結合している。VIN3はcold-inducibleで、VRN5はconstitutiveに発現しており、低温処理によってPolycomb nuclear regionに集積する。最近、vernalizationを示さない他の植物(トマトなど)でも、VEL関連タンパク質が同定されている。そこで、Polycomb silencingにおける複数のVELタンパク質のそれそれの役割を詳細に調べることにした。これらのVELタンパク質の構造を略記したのが図1である。

Vin3およびvrn5変異体では、どちらもH3K27me3のFLC領域への集積は認められなかった。Methylationの中間体であるH3K27me2の集積は、vrn5およびvrn2(PRC2 subunitの一つ)変異体では認められなかったが、vin3では集積が認められた。したがって、PRC2-depenent silencing of FLCにおけるVIN3とVRN5の役割が異なることが示された。PRC2の4つのubunits, VRN2, SWN, FIE, MSI1のそれぞれにHA-tagを付け、GFP-tagged VEL proteinsをhuman embryonic kidney cellsに強発原させ、Co-immunoprecipitationで各組合せの相互作用を調べた。その結果、VRN5がPRC2と結合すること、VIN3はendogenos human vrn5を介してPRC2に結合することが分かった。図2はAlphaFold2によるVRN5のPHDsuperによる分子表面のRおよびK局在モデルである。これらのRやKをGluに置換すると、PRC2との相互作用がなくなった。

VEL orthologsは植物界でよく保存されている(その比較は本論文には詳細に論じられているが、本稿では省略)ものの、VRN5 orthologsはlinker部位にあるDLNxxxVPDLNというmotifが他のVELとは違っている。このlinker部位は、VRN5のPRC2への結合に必要である。
PHDsuper foldsを調べると、VRN5とVIN3はかなり違う。そこで、VRN5とVIN3の様々なキメラを作り、PRC2との免疫共沈澱を調べた。PHD、FN3、linkerのどのdomainをVIN3に代えたchimeraは結合が認められなかった。逆に、VIN3の各domainをVRN5のものに置換したところ、いくぶんの結合が認められた。特に、VRN5-FN3を有するVIN3はPRC2へのはっきりした結合を示した。このことは、FN3がVRN5のPRC2への結合の鍵をにぎっていると推測される。逆に、PRC2の構成要素を個別に発現させ、VRN5とのCo-IPを調べた。その結果、PRC2の構成要素のVRN2およびMSI1がVRN5と相互作用することが示された。両者の構成要素が相互作用する様式を図3に示した。

VEL proteinsがgenomeのどの部位に結合するのかを調べた。VIN3-GFP、VRN5-TFP、VEL1-3FLAGを発現する株を、non-vernalized stateおよびcold処理6週間後に、Chip-seq解析を行った。サンプルあたりmapping rates 55%~92%で最低3,000万回配列を読んだ。Peak calling with MACS3で選んだ有意のpeaksについて考察した。TSS(転写開始点)から上流1kbと1kb下流の間にあるpeakを同定した。VIN3およびVRN5について、低温処理によってtarget genesが増えた。これはVIN3量が低温処理で増えたこと、およびそれに付随してVRN5の結合が増えたことを示唆する。VEL1については、さらに多くのtarget genes候補が見出された(表1)。これらのVEL proteinsがcold-induced silencing on FLCにどのようにかかわるか、については一定の情報が得られた。しかし、一方で、VEL proteinsが多様なPRC2 target genesにかかわり、植物の増殖や分化において機能を発揮していることが示唆された。

- Franco-Echevarria, E., et al. Genes & Dev. 37: 801 (2024)